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創立70周年を迎え、東洋合成の存在意義(パーパス)を見つめ直し、人財・創造性・科学技術を核に、人類の文明の成長を支え続けます。 東洋合成工業株式会社代表取締役社長 木村有仁

東洋合成が70年間追い求めてきた存在意義と、培われた強みとは?

   私たち東洋合成工業株式会社は、2024年9月27日に創立70周年を迎えました。70周年を迎えることができるのも、今まで当社の成長を支えて頂いたお客様、社員、協力会社、株主、地域の方々、関係者など、すべての皆様のご協力の賜物と、心より感謝申し上げます。
最近の10年では、新型コロナウイルスの流行や創業者逝去など大きな変化に直面してきましたが、70周年にあたり、当社が継続できる理由を、今の考え方で改めて整理してみました。
   その一番の理由は、当社の経営理念「人類の文明の成長を支えるため、人財・創造性・科学技術を核として事業を行い、その寄与度を高めるためにも成長する」ことをひたすら真摯に実行してきたことです。常に地に足をつけて、未来を想像し、必要とされる製品や技術を研究開発、量産化し、お客様にお届けすることを実直にやり遂げてきたことが、当社の核となる強みを築いてきました。当社が、半導体向け感光性材料世界シェアNo.1、合成香料の特定原料世界シェアNo.1、グローバルニッチトップ企業(素材・化学部門)として経産省認定、ジョブ型雇用の率先企業として内閣府が公表などの結果に結びついたのは、時代のニーズ、お客様、人の心に真摯に応えてきた結果と考えています。そして今社会は、半導体やAI、物理化学分野の技術的進化だけでなく、人々の幸せ、持続可能な発展、人的資本経営やウェルビーイング(人間、社会の幸せ)を、世界中のサプライチェーンでの実現を目指しています。当社は、その変化一つ一つを自分たちの進化のチャンスと捉え、研究開発や人材育成、生産能力やサプライチェーンでの強化など、あらゆる分野で成長投資を加速し、経営理念を今の時代で実現しようと、日々取り組んでいます。
   当社の理念にある「人類の文明」も進化し、現在では「人類がこの地球上で持続可能な発展を遂げる」文脈で語られ、「人財、創造性、科学技術」も、豊かな社会やAIの登場により、人の心の充実の追求ができる、歴史的転換点に立っています。当社の成長の原動力は、研究開発ですので、人財がモチベーション高く、創造性を発揮して、研究開発に邁進できる職場環境を作っていくのが私たち経営の役割であり、それによって、人類の文明への成長に貢献できると、当社の存在意義を改めて認識しております。

価値創造の源泉となるビジネスモデルとありたい姿

   東洋合成では、ハイテク材料世界トップシェアメーカーの責任として、常に10年、20年先の社会を想像し、次世代やその先の研究開発を行っています。技術革新のペースが非常に早い領域ですので、お客様が新たな製品イノベーションや品質を必要とされる際、タイムリーな実現が求められる一方、そこには常に新たな技術が必要です。しかしその開発には数年、長ければ10年以上かかる場合もあり、我々はお客様が必要とされる前に、安全、反応技術、分析技術、要素技術、量産化、設備など、新製品開発に必要な要素を開発しておかなければなりません。そのため、我々の成長には、常に未来に必要となる技術を想像し、物質科学を探求し、開発によって知見を蓄積し続けていくことが大切と考えています。
   これは、当社の3事業、感光材、高純度溶剤、化学品物流、すべてに当てはまり、新製品や新サービスの提供時には、その品質を実現する精密合成、高純度化、設備設計、分析解析、量産化、輸送など、すべてが揃うことが必要です。化学プラントの建設コストが上昇し続け、半導体の進化を支えてきた微細化が極限に近づく現在、事業の成長には、1兆分の1の不純物コントロールと、高い生産性の両立が求められます。当社では、現在までの知見を盛り込み、2024年3月に1兆分の1の不純物管理に対応する充填所も淡路工場で竣工し、4月には将来を見据え、開発分析キャパシティを2倍以上とする開発分析棟を開設、さらに9月には先端半導体向け感光材生産において約1.8倍の生産を可能とする設備が完成しました。常に先端を走り、高い価値を創造し続けるには、このように技術進化をいち早く経営のアクションとして具体化することが最も重要だと考えています。
   そして常に未来社会を想像し、あらゆる技術を研究開発によって準備し、必要とされるタイミングで世に送り出して初めて、人類、社会の課題を解決する材料を生み、世の中のイノベーションを支える会社となれると考えています。

直近の外部環境とこれからの課題

東洋合成工業株式会社代表取締役社長 木村有仁   直近の業績に大きく影響を及ぼしたのは、やはり新型コロナウイルスの流行です。巣ごもりによってデジタル需要が一気に加速し、その後、半導体が各国で国家戦略に格上げされ、メーカーの設備投資が拡がりました。 続いてChat GPT 等の生成AIの登場によって、半導体の可能性が一気に拡大し、人の存在意義や心の在り方にも焦点が当たり、ここ3、4年が世界の半導体産業にとって、大きな転換期であったと考えています。
   当社業績は、2022年度までの3ヵ年で売上は1.4倍になりましたが、2023年度は半導体市場の調整で減収減益と、一歩後退しました。しかし2024年度に入り、生成AIにより先端半導体の需要が増加する一方、AIの進化には更なる半導体の性能向上が必須となっています。現在、製造露光工程における吸収効率向上、半導体配線の更なる微細化や3次元化、半導体自体の低消費電力化設計などにより性能向上が可能と言われ、それには、超高純度化された溶剤やより感度の良い感光材が必須となるため、当社の技術をフル活用して、その開発に注力しています。今後、新設備の稼働に合わせ、明るい見通しをステークホルダーの皆様にお届けできると考えております。
   また新型コロナウイルスの収束後、世界は多極化の時代に突入しました。地域紛争も増え、世界経済はインフレ基調となり、グローバルサプライチェーンの混乱が増えました。国内では、少子高齢化による労働人口の減少や国内市場縮小による需要不足が課題となり、当社の事業環境にも影響が出ています。例えば原料の調達は、国内の基礎化学品の再編に伴い、輸入品が増加し日本品質の原料が失われるリスクとなっています。しかし、我々は高浜油槽所で輸入品を貯蔵し、その原料を精製技術によって高純度原料を作ることができ、新たな強みになっていくと考えています。また多くの企業の皆様にご利用いただき、日本品質のサプライチェーンの保持に貢献していきたいと思います。さらに、人類の持続可能な発展の観点から、化学品のリサイクルや排出削減にも力を入れ、蒸留によるリサイクル技術や省エネ技術により、サプライチェーン全体での環境負荷低減に貢献していきたいと考えております。
   これから労働人口が減少する日本での事業成長に向け、人材採用にも力を入れ、日本経済全体では1人当たりGDPの向上が重要となるため、2024年も平均8%超の賃上げを実施し、今後も心に根差した人材育成とDXを通じて生産性の向上を図り、日本社会の活性化に貢献する企業を目指してまいります。

中期経営計画「Beyond500」の進捗

   「Beyond500」では、「世界No.1ダントツの超高品質と生産性向上の両立により、未来を創る」というビジョンを挙げています。
   中期経営計画では、2026年度売上500億円、営業利益80億円と高い目標を掲げ、2024年度末の見通しで、売上は400億円弱まで拡大し、その先も見据えたアグレッシブな中期計画期間の先行投資もほぼ完了しました。今後、生成AIや次世代半導体の需要拡大に向け、いかに速く生産能力を活用し、安全に、需要に応えていくかが大きなポイントになります。そして、それは人類のイノベーションにとって重要な鍵となる取り組みです。生成AIは、新たな知識創造プラットフォームとして既存の人類の知見をすべて読み込み、データセンターやクラウドも生成AIの性能向上に伴い発展していきます。我々はそのための必須材料と製造技術を磨き上げ、新時代の実現に挑戦しています。 材料開発は未知なる領域も多く、既存の科学だけでは難しいですが、そこは要素技術開発の融合によって知見を生み、克服していきます。ニーズがあり未知なる難しさがあるからこそ非常にやりがいがあります。私たちの「Beyond500」はその達成が、次の未来を拓くと考え、このような活動こそが、イノベーションを実現とする「素材産業の一員として未来への責任」と認識しています。

「Beyond500」サステナビリティの加速

   「Beyond500」では、サステナビリティの取り組みも一段と加速させ、「化学メーカーとしての責任」、「素材産業としての責任」、「人々の未来を支える責任」、の3つの観点でサステナビリティ(持続可能性)を強化しています。
   「化学メーカーとしての責任」は、まず労働安全衛生と環境影響の最小化です。当社の、経営方針や行動指針では「常に安全最優先」を定め、労働環境のリスクアセスメントも定着化し、それに基づく安全設備投資、安全教育、目指す姿や課題を本音で語る安全ワークショップ、さらに文化として定着化を促す、安全文化醸成活動を全事業所で展開しています。その効果は著しく、一人一人が安全を自分ゴトと捉え、作業担当者の安全ディスカッションに有識者が加わりながら解決策を生み出しているため、有効性が極めて高く、安全トラブルは激減しています。また健康優良法人認定も取得し、社員一人一人に今年の健康目標を宣言してもらい、仕事パフォーマンスの健康影響アセスメントも実施し、今後さらに心理面に着目した安全教育や組織開発、人的資本経営、企業統治、地域貢献に繋げてまいります。
   また化学メーカーとして、地球環境への負荷低減にも重点を置き注力しています。当社はPRTR 制度に則り、指定化学物質の大気放出の最小化に向けた設備投資を進めてきた効果により、大気排出量は年々減少しています。排水モニタリングも徹底し、水に化学品が混ざり産業廃棄物となる排水を大幅削減する工程や設備を強化しています。さらに、温室効果ガス排出量やエネルギー使用量の見える化、サプライチェーン全体でのカーボンフットプリントに一昨年から取り組み、削減目標を2030年度の地球温暖化ガス排出量32%削減(2013年度比)と定めました。この目標に向け、将来のエネルギー構成を描き、毎月の定量化とレビューを行う仕組みを構築し、具体的な設備設計やグリーン電力の購買にも着手しています。淡路工場では電力使用量の50%をグリーン電力に切り替え、その他の再生可能エネルギーの導入も検討に入りました。 2023年度は、環境長期目標の設定とアクションプラン立案、2030年度までのロードマップ作成まで進めることができたのが大きな成果だと思っています。このように、全社の環境安全委員会の下、全事業所がデータに基づき、カーボンニュートラルに向かって動き始めました。
   「素材産業としての責任」は、未来を実現する材料の供給ですが、市場シェアが高いほど災害に企業として耐える力(レジリエンス)が重要と考え、事業継続計画の改善にも積極的に取り組んでいます。具体的には、地震や台風などの大規模災害を常に想定し、ハザードチェック、護岸や構造物の評価や地盤改良などの強化、サプライチェーンや電力の二重化、非常用電源の整備、重要バックアップ装置の保持、地震や台風対策クラウド化などを強化しております。環境面では、緑豊かな環境との共生をビジョンに、大気・水質・エネルギー・化学物質の環境影響を最小化しながら、未来素材の開発と供給拡大に取り組んでまいります。
   「人々の未来を支える責任」として、人的資本の充実に取り組んでいます。当社の競争力の源泉は、研究開発であり、それは社員のチームワークと創造性の発揮から生まれますが、現在はそれを更に要素分解し、根本である、人間の心の理解、自尊心高めるコミュニケーションからスタートしています。創造性の発揮には、まず人の心の理解が大切であり、人として大切にされ、良きチームの仲間として認められ、その中で意見の異なる多様性を許容していくことが組織の成長に繋がります。人の心が大切なのは皆がわかっていることですが、人の心の仕組みや、どう大切にしたらいいのか、どうコミュニケーションを取れば相手が幸せになるのか、創造性を発揮できるかといったことも、脳科学や心理学の発達のおかげで、近年、大分明確になってきています。当社には、化学や技術に関する様々な知識や方法論を習得する機会も整っていますが、科学技術のレベルの向上と共に、チームとして力を発揮するには、人の心と心がつながるコミュニケーションが必須です。一人ひとりが自分の目標や夢、実現したいことを仲間と共有し、その上で取り組むからこそ、やって良かったという達成感が生まれ、失敗も許容し、互いに学びとすることができます。 現在、そのような職場のコミュニケーション環境づくりに時間を割いて取り組んでいます。人の心も科学も学び、一人ひとりが創造性を発揮できる職場環境を作り、名実ともに「持続的発展可能な組織」とし、イノベーションや未来の創造を実現していきます。
   その基礎となる人権方針を制定し、多様性を許容するダイバーシティ活動に反映させ、くるみん認定も受け、子育て経験のシェア会や、介護セミナーを開催し、千葉県内の「わーくはぴねす農園」で働く障がいを持つ社員の方々に、いかに尊厳や生きがいを感じてもらえるかといった活動にも取り組んでいます。このように今後、重要性を増す、様々な人々の立場に立って考える心を組織として高めていきたいと思います。
   さらに女性活躍では、単なる機会均等ではなく、抱えている状況を加味した公平性、働きやすい職場環境の実現にも力を入れていきます。人権方針はサプライチェーンも包括しており、世界の各紛争地域や児童労働等に関与、加担しないという方針をCSR 調達にも盛り込んでいます。それに加えて、協力企業の賃上げ、あるいは、我々の労務環境についてお客様と対話していく活動も始めております。

ステークホルダーの皆様へ

東洋合成工業株式会社代表取締役社長 木村有仁   現在は、AIやIoTを活用した産業構造の変革に加え、「人間中心」をコンセプトに据えて、環境変化への対応力を有する持続可能な産業への変革を目指す第5次産業革命といわれ、知識と労働によって経済発展を作り上げてきた人類文明が非常に大きな転換点に迎えていると実感しています。同時に、地球の人口、社会、人々の生活、価値観も大きく変化しています。東洋合成は、先端技術の先取の精神だけでなく、人の心や暮らし、環境といった分野でも未来の進化を先取りし、より進化した未来を体現する会社を目指します。そのために、当社の社員一人ひとりが未来をつくるという自分のストーリーを描き、高い志を共有し、挑戦していける職場づくりに全力を注いでいます。ステークホルダーの皆様におかれましては、引き続き、当社の未来にご期待、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。